細分化された渋谷系ファッションのスタイルとその形態

一昔前は渋谷系といえばギャル男。ガン黒でガンメッシュ、カラパンという分かりやすいファッションだったが、今では随分と細分化され、その形態も様々。ということでもはや絶滅してしまったスタイルも含めて、渋谷系ファッションのスタイルをまとめてみる。

渋谷系の王道アメカジ

アメカジだけでも結構細分化されている。王道アメカジはデニムやスウェット、パーカなど、アメカジ王道アイテムを使用したスタイルだ。流行の廃り関係なく普遍的ナアイテムで構築でき、比較的誰でも似合うことなどでも人気がある。そのため幅広い年齢層から支持されている。Gジャンとパーカのようにアメカジ王道アイテムをシンプルにまとめることが多い。絶対に外せないのはデニム。リーバイスやエドウィンなどのヴィンテージにもこだわる。髪型は茶髪中心のM字バング系とブラック主体のワイルド系に分かれる。梅田直樹のような格好がこのスタイルのイメージ。

ヴィンテージ系アメカジ

リアルなヴィンテージアイテムはどれも値段が高く、手に届かない。ここで言っているのは本物のヴィンテージを使ったスタイルではなく、アースカラーやダメージなどのアイテムを使ってヴィンテージ感をコーディネートに表現したスタイルを指す。髪型はハネさせて躍動感を出したり頭部を盛ったりできるミディアムロングが人気。小物はゴローズやアリゾナなどのネイティブ系のシルバーアクセが定番。落ち着きのあるアースカラー、ダメージやクラッシュ加工を施したアイテムが鉄板だ。

スポーツ&サーフ系アメカジ

夏に人気のスタイル。こちらもヴィンテージ系と被る部分があるが、渋谷系アメカジの中でも断然ポップで爽やかな雰囲気をアピールできるスタイルだ。サーフ&スポーツ系のカラフルで明るいカラリーング、少し煤けたようなヴィンテージ感のある色味のアイテムなどで武装し、全体的に少しルーズなシルエットでまとめ、ラフなリラックス感を追求。ただし、くだけた印象になりすぎないよう、ベルトや靴などどこかにアダルト感を加味している。

ワーク系アメカジ

チノパンやネルシャツなどの土臭いアイテムで男臭く仕上げるワークスタイル。髪型もブラックのオールバックやツーブロックが主流で男らしさ全開。それだけに、硬派な風貌に定評がある。年齢層は比較的高めの世代に集中している。元々、労働者が着ていたアイテムをスタイルに取り入れているので、気軽に武骨さを出せるのがいいところ。なかでもディッキーズやベンデイビスは、その代表格として多くの支持を得ている。このスタイルもネイティブ系のシルバーアクセが鉄板だ。

ロック&バイカー系

長いこと渋谷系ファッションを牽引してきたロック&バイカー系スタイル。ブラックのアイテムをベースとした、クールかつワイルドなコーディネートが核となる。ロック系はインナーが長かったりサルエルやスキニーを使用するなど、随所に変化球を加えているのも印象的だ。同種としてハードにキメたりヒッピーを匂わすロックスタイルも存在する。バイカー系は適度にアメカジテイストを取り入れつつ、バイカーらしいニュアンスを漂わす。そして適度に着崩すのがポイント。ヘアスタイルは盛りヘア&M字バングで茶系を中心としたカラーか、ブラック主体のワイルドヘア。

センターGUY

ギャル男のファッションを語るうえでセンターGUY(センターガイ)は外せないだろう。渋谷センター街に生息するメンズを意味するGUYと重ねた名称で、マンバギャルの男性版だ。まるで土人のようなド派手なガングロメイク&髪型で、ピンクなどのカラフルな明るい色で全身を固めたりと、とにかく目立つファッションが特徴。レディースのブランドの洋服を身にまとったりもする。ギャル男の雑誌メンズエッグで取り上げたことで一世風靡した。絶滅危惧種に指定されていたが、現在は完全に絶滅。もはやその姿を見るものはいない。ちなみにメンズエッグの読モとして活躍していた梅田直樹や藤沢直希(きおな)もセンターGUY出身だ。

原色系

10代の若い世代中心にブレイクした原色系ギャル男スタイル。服装、髪型、全てにおいてド派手に強烈にキメるのがポイントだ。また、キャラクターアイテムやピンクや水色といったカラーでキュートさを取り入れているのも原色系ならではの特徴。髪型はミディアムをベースに、とにかくド派手にキメるのが基本。カラーと盛りで勝負する。プリクラや写メが大好きな世代が中心のため、いちいちカワイイポーズでキメる。サーフ系アメカジに近いスタイルでもある。

アーバンカジュアル

カジュアルなアイテムに、テーラードジャケットやジレ、タイなど、都会的なエッセンスを組み込み、スタイリッシュにキメるアーバンカジュアル。ギャル男のバイブル雑誌メンズエッグで取り上げていたスタイルで、兄弟誌メンズナックルで提案するファッションに近い。タイトなアイテムを使って、渋めなカラーでスタイリッシュにキメるのがスタンダードだ。モノトーン主体で上品かつエレガンスにキメる。また、ドレープ系アイテムもマスト。他にもカジュアル色が強いものを取り入れ、差し色として原色系を使うなどキュートに仕上げる方法もある。ヘアスタイルはショートからロングまで幅広いタイプが存在する。

ジャニ男系

ジャニーズのような万人の女子にウケるジャニ男系スタイル。爽やかで優しい雰囲気のあるキレイめなファッションに、どこかしらタフな男らしさも香らせる。その見た目は雑誌ファインボーイズに掲載されていても全く違和感がない。渋谷系ファッション的な妖しさやアウトローテイストっぽさは抑え気味にすることで、清潔感を全面に押し出していく。ジャニ男系は渋谷系メンズファッション誌メンズナックルで突然プッシュされたが、このスタイルが本当に流行っているのかは疑問だ。

超ナックル系

アウトローな渋谷ブラックカジュアルを進化させた超ナックル系は、雑誌メンズナックルで提案しているスタイルだ。ワイルドでゴリゴリな男臭いテイストのアウトロースタイル、それから妖しいブラックドレッシーなテイストのエレガンススタイルがあり、どちらもブラックをベースに不良感をキープさせている。コーディネートはモノトーン中心。ダークなエレガントさのある超ナックル系は、不良好きギャルからの支持率高し。ヘアは長髪からミディアム、短髪までさまざま。このスタイルは2つに分けてもいいかも。

ホスト系

夜の妖しい男の雰囲気を醸し出すホスト系スタイル。スーツやテーラードジャケットをベースとしたスタイルが基本。それをストールやコサージュなど、あらゆる小物でラグジュアリーでセクシーな雰囲気に仕上げるのがポイント。また、他のスタイルとは異なり、肌が白い人が多いのも印象的だ。財布やキーケース、名刺入れ、バッグなど、小物はDCブランドを好んで使用する。髪型は筋盛りでボリューミーかつドレッシーに。カラーは派手な人から落ち着いた人まで様々に分類。

関西系カジュアル

渋谷系ファッションといいつつ関西系とはこれいかに。ヴィンテージアメカジやロック系スタイルに、関西独特のエッセンスを加えたコーディネートの関西系カジュアルスタイル。ストールやベストなど個性的なアイテムを上手く組み合わせることで完成する。関西発信の独特なスタイルだけに、大阪では爆発的な人気を誇った。アクの強い小物使いがポイントで、ヒッピーを彷彿とさせたり、アーバン的なアイテムだったり、いろんなものをバランスよく取り入れるのが関西流だ。古着も好む。ヘアスタイルは短髪からロングまで似合っていればなんでも。

アシッドロック

進化系ロックとしてストリートで絶大な人気を誇ったアシッドロックスタイル。そのスタイルが似ていることからエセサロン系とも呼ばれている。雑誌メンズナックルで取り上げたことから急激に盛り上がりを見せた。コーディネートはブラックカラーをベースとしたロックスタイル。そこにパンクやエスニック、または古着などの奇抜なアイテムを落とし込むことで個性をアピールする。トップスは短く、インナーはユル長、足元はスニーカーでスマートに魅せることが基本だ。アクセはクロムハーツやブラッディマリーが鉄板。

ヴィジュアル系

アーティストのようなファッションにホストっぽさをミックスしたヴィジュアル系ファッションは、雑誌メンズスパイダーで提案しているスタイルだ。レザーやドレープなどで退廃的な雰囲気と艶やかな印象を取り入れつつ、気品のある着こなしに仕上げる。カジュアルテイストのVカジ系、ホストテイストの強いVホス系、近年はよりアーティストのファッションを押し出し、艶っぽさとオリジナリティを追求するJV(ジャパンヴィジュアル)を打ち出している。果たしてこれは渋谷系なのかと言われると違うような気もするが、渋谷系ロックから繋がっているスタイルとして加えてみた。

悪羅悪羅(オラオラ)系

他のスタイルが中世的なニュアンスをウリにしているのに対し、悪羅悪羅(オラオラ)系はその部分を一切排除した漢全開のコーディネートが特徴だ。体を鍛えタトゥーで武装し、ヘアは短髪&黒髪というハードなスタイルが基本で、チャラさを排除。スタイルに和テイストも取り入れ、硬派な男をアピールする。アクセは数珠が人気。ソウルジャパンを愛読している。野生と品格のHGC(ハイグレードカジュアル)や輩ラグなどのマフィアンカジュアル、ブラックワークスタイルなど、近年はオラオラ系も細分化してきている。


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